活動レポート&里山便り
里山活動レポート:その他
里山活動レポート後半です!
前日の雨天とは打って変わって晴天の栃木。
美人の湯で疲れを癒し、さわやかな空の下2日目の巡礼が始りました。
5×緑のフィールド管理をお願いしている馬頭の里山本舗・佐藤さん奈良さんにご案内いただき、佐藤さんの山に入らせていただきました。
佐藤さんの山へ車で向かう時、曲がりくねった山道をすっと抜け突然開けた場所に出たかと思うと、それまで見ていた風景とはまるで違う美しい里山が現れました。
「わあ!この山すごくきれい~!!!」そう叫んだ瞬間に、運転をしてくださっていた矢澤さんが言いました。
「あの山が佐藤さんの山だよ」 同行の女子 「キャー!!!!」
何が違うとはっきり表現することはできないのですが、遠め目の風景で見てもわかるほど、佐藤さんの山はさわやかで清潔感があり、なぜかとても美しく見えたのです。
さすが...!!女子一同さらに佐藤さんのファンになりました。笑
車を降りて、早速山へ。
斜面を少し上り下り現れたのは小さな棚田。前日市貝でも出会ったシュレーゲルアオガエルの鳴き声も盛んに響いていました。そこでは「空中田植え」(多分佐藤さんの造語だと思います)が行われているそうで、少し高いところから稲の苗を投げ込んで田植えをするのが、昔からの田植え方法だということでした。
機械の入れないような山間の小さな田んぼでは効率を高めるために様々な工夫が凝らされているんですね。
さらに山の奥へ奥へ進みます。
山道のわきには様々な植物が彩りを添えています。
とくにかわいらしかったのがコアジサイ!!近所に生えているアジサイの5分の1くらいの小さいアジサイです。(一同写真をとりまくり。)
やはり山を歩くときに、植物に詳しい方とご一緒出来ると楽しさが何倍にもなります。
次から次へと、「この草はなんですか?」と質問をしながら2時間ほどのハイキング。名前を教えていただけるだけでも自分の世界が少しづつ広がってゆくような喜びを胸に感じながら、美味しい空気を吸い、鳥の声やカエルの声に耳を澄まし、さまざまな彩りにあふれる路肩の草花を目にし、もうへとへとです。
そんな私たちを待ち構えていたのは、佐藤さんのおとうさまおかあさまによる、里山ランチタイム!!
おにぎりや蕗の煮物、きゅうりの漬物や酢のもの、ふかふかのおまんじゅう、つきたてのお餅、採れたてカモミールティまで!!里山フルコースです。
どれも山の恵みを感じるものばかりで、箸が止まりませんでした。笑
そんなこんなで、遊んでばかりのようですが、今年度もたくさん?すてきな植物を都会に供給お願いいたします、という願いを込めて岐路につきました。
2日間を通して、自然とともにあるたくさんの喜びに触れ、里山にある豊かさの恩恵を感じましたが、そこで生活することのリアリティはきっと、住民になってみないとわからないんだろうなとも思いました。
都市で生活する私たちは、仕事の中でどれだけ資本的に優位性を持っていたとしても、支えているのではなく支えられているということを忘れずに、日本中に広がる里山のフィールドと少しでもつながる方法を考えられたらいいなと思います。
里山はお宝がいっぱいです。
季節とともに移り変わる風景を楽しみに、次回また里山にお邪魔できるチャンスを伺おうと思います。
新緑の芽吹く六月。
オオタカ保護基金さんのイベントで栃木県市貝市へ、そこからさらに5×緑の植物生産でお世話になっている馬頭の森へ、1泊2日の里山巡礼に行ってまいりました!!
オオタカ保護基金さん主催のイベント、「田んぼのいきもの 観察会&里山保全活動」は残念ながら雨天で次の日に順延。次の日に馬頭訪問を予定していた我々を雨の中、オオタカ保護基金の遠藤さんが彼らの活動フィールドである市貝市の谷津田をご案内してくださいました。
谷津田とは丘陵地が浸食されて出来た谷状の地形である谷津を利用して作られた田んぼのことで、治水技術が発達していなかった古来は、集水域であるため容易に湧水が得られ、稲作に向いた場所でした。しかし、稲作を機械で行うようになった今日では、山間の小さな田んぼは管理がしにくく、真っ先に放棄田となることが多く、管理されなくなった環境下で荒地となる場合が多いようです。
その一方で、谷津田の生態系は、小さな範囲に、森林や森の要素、田んぼや畦の里の要素など、さまざまな生きものが生活するに必要な環境が凝縮されているため、生物多様性を重要視する近年はその価値が見直されています。
オオタカ保護基金さんが守っているサシバも、この谷津田を好んで生活するため、谷津田の再生によって、サシバの保全と環境の保全を同時に行っているとも言えます。
さて。そんなわけで。
雨の中、大人たちがはしゃぎまわって一日早い小さな里山観察会。
カエルの鳴き声が響く畦の上、網を振り回し大奮闘!
そして大物を捕まえました!!絶滅危惧種に指定されているタガメさんです!!!キャー!!
かつては「水中のギャング」(wikipediaより)と呼ばれていた(らしい)、獰猛な肉食性のタガメさんです!!その腕で獲物をギュッと捕まえて、体液をチューっと吸うらしいです.....ほんとに怖い!!はじめて実物を拝見いたしました。ナーセリー便りをいつも書いてくださっている矢澤ナーセリーの矢澤さんも初めて見たという、奇跡の出会いです!形がもう、獰猛さを物語っており、女子一同絶句。(もちろんごあいさつ後はちゃんと田んぼにお帰りいただきました。)
本当に豊かな生物多様性をなしているんだな。と実感。他にもシュレーゲルアオガエルやオタマジャクシ、ホトケドジョウなどたくさんの出会いがありました。
しかしコンパクトな環境とはいえ、管理するのはとても手間がかかる、というのは一目瞭然。
田んぼに水を引くための小さな水路(てび)と畦を広く取って、サシバが獲物を見つけやすくする工夫や、すべて手作業で行っていた時代と同じ草刈りの道具を見せていただき、その情熱と果てしない手間を思わずにはいられませんでした。
何気なく過ごしていると関わることのない世界ですが、私たちが思い描くような里山の風景や鳥や蝶や虫が生きている世界が本当は失われつつあり、日々汗を流して守っている人たちもいるのだということを改めて知りました。
この風景は日本の昔からの素敵な風景なんだよと私たちの子供にこれからも伝えられるのだろうか。では私たちに何かできるのだろう、まだなにも答えは出てません。
山や田んぼや植物や動物は、今日も元気かな
まずはそんな風に思うきっかけをいただいた一日でした。
(後半につづく...!!)
昨年2月20日の栃木県市貝町でのサシバの学習会に引き続いて今年も『サシバの里』
シンポジウムが1月28日に市貝町で開催されました。
(昨年の「学習会」の様子はこちら)
5×緑では、このシンポジウムを主催したNPO法人オオタカ保護基金と連携して、
今年からサシバが棲み続けることができる環境保全活動を本格的に応援していく
ことにしていて、その具体的な取り組みの検討を始めたところです。
みなさんに参加・応援していただける活動も計画する予定なので、是非ともご参加下さい。
(具体的に決まりましたら、ご案内いたします。)
■基調講演
今年のシンポジウムでは、はじめに基調講演として、市貝町で2000年からサシバ
の生態調査を続けてこられた東京大学大学院生物多様性科学研究室特任研究員の
酒井すみれ先生からサシバの詳しい生態のお話を伺いました。
とても興味深い内容でした。
・サシバは4~7月に市貝町で繁殖し、秋には20~30日かけて2,500km南に移動して
南西諸島や沖縄(石垣島など)で過ごす。中にはフィリピンまで渡る個体もある。
春は3月中旬に沖縄・石垣島を飛び立ち、4月中旬に市貝町に到着する。
・現在は絶滅危惧種に指定されているが、人が管理することによって維持されてきた
里山で繁殖する密度が高い。
・里山の中でも特に水田や林が入り組んでいる谷津田のような環境を好み、
水田・水路・ため池などの水辺環境に畦・草地・林などが加わっていることが大事。
・その理由として、営巣場所と採餌場所の両方が確保されている必要があるため。
・サシバは4月に巣作りをはじめて、5月に抱卵する。この頃は水田や畦で主にカエルや
ネズミなどを捕らえて食べる。
・6月上旬頃まではカエルやヘビなどをよく捕まえているが、下旬になると水田や畦で
それらが減ってくるので、林でヤママユガの幼虫などの昆虫を捕まえるようになる。
・調査の結果、雛3匹で1ヶ月の間に15kgの餌を食べた。繁殖には相当量の餌の存在が
必要になる。餌となる生き物類が大量に生息できる環境が必要だ。
以上のように、サシバは農の営みによって維持されてきた里山の多様な環境に
支えられて生活してきた「里山を象徴する種」のようです。
ところが、サシバが最も好む谷津田は、営農条件が悪いために放棄されやすく、
最初に休耕田になってしまうのです。
休耕田になってしまうと、水が張られなくなるのでカエルは産卵できなくなり、
また周りの畦なども管理されなくなって草丈も高くなり、餌を見つけにくくなってしまいます。
餌が見つけにくくなると営巣場所としては適さなくなるので、サシバが減っていってしまいます。
また、主な餌となるカエルは、水田と林を移動するので、移動経路となる水路の
形態がとても大事で、コンクリートで固められるとカエルは減ってしまうようです。
サシバを保全していくには、水田(谷津田)と林がセットであって、かつその環境が
管理され続け、そして水田と林を生き物が自由に行き来できるような状態で
維持されていることがとても大切なようです。
■活動報告
続いてオオタカ保護基金副代表の野中純さんから「市貝町におけるサシバの保全
活動」の報告がありました。
オオタカ保護基金は、2002年から市貝町で調査を開始していて、生息数や生息環境の
調査に加えて繁殖成功率なども調べているようです。そして、サシバの生息状況と
営農地の特徴から地域を区分して、そのタイプ毎に保全のためのプランなども
提案されているようです(詳細は昨年の「学習会」の報告参照)。
また昨年から、市貝町内で休耕田となって放置された谷津田を借り受けて、外来の
セイタカアワダチソウを除去したり草刈り作業を行って、さらに水田に水を張ったりして、
サシバが生息できる環境づくりに取り組んでいる様子が紹介されました。
その活動の中では、自然観察会なども開催して、サシバ保全のための普及啓発活動も
行っているとのことです。
※5×緑では今年この谷津田での活動を支援していく予定です。
■スペシャルトーク
そして今年は、俳優で日本野鳥の会会長の柳生博さんをお招きして、
「柳生博さんとサシバ、里山、農業について語ろう」というスペシャルトークがありました。
柳生さんは、兵庫県豊岡市でコウノトリの野生復帰の取り組みを行っている
「コウノトリファンクラブ」の会長でもあることから、そちらの事例なども交えながら、
サシバの保全やそれを活かしたまちづくりについて、様々なお話を楽しく聞
かせて下さいました。市貝町の人たちも勇気づけられたことと思います。
主な内容は以下のとおりです。
・日本人は元々自然と折り合いをつけながら暮らしてきた。生き物と仲良く暮らしてきた。
ところが我々の先輩達が生き物に厳しく接してきた。そのため、たくさんのものを
失ってしまった。何とか取り戻したい。
・子供の頃、野良(のら)仕事をやるようによく言われた。野良仕事とは「野を
良くする仕事」でとても大切だ。
・市貝町の谷津田は最高だ!すばらしい財産だ!教育の場として最適である。
・市貝町は人間の原点のような暮らしの営みができる。都会から子供達を呼んで、
自然学校のようなものをやれたらよい。それにはインタープリテーションが大事だ。
インタープリテーションとは、科学的に教える・伝えるということで、科学的に案内し、
生き物の通訳をするようになれたらよい。「サシバの里」として教育ができるように
なれたらよい。
・コウノトリの野生復帰の取り組みを行っている豊岡市では、農薬を使わない、
化学肥料もなるべく使わない、冬でも田んぼに水を張る、という「コウノトリを育む農法」を
やっていて、コウノトリの生息に配慮した農業を実施している。
・稲を育てる途中で田んぼから水を抜く「中干し」を行うとオタマジャクシが死んでしまう。
この中干しを2週間遅らしてオタマジャクシがカエルになるのを待つことはできないだろうか?
豊岡市ではこれを実施して、害虫のカメムシをカエルがたくさん食べてくれたというメリットがあった。
■パネルディスカッション
最後は「『サシバの里』づくりを進めるために」というテーマで、柳生さん、地元の
JA直売会会長の関沢さん、市貝町に移り住んで無農薬で野菜づくりに取り組
んでいる小野寺さん、町長の入野さん、オオタカ保護基金会長の遠藤さんによる
パネルディスカッションが行われて、「サシバの里づくり」に向けて大きく一歩
踏み出す議論が展開されました!
(コーディネーター伊村さん:栃木県農政部経営技術課)
〈関沢さん〉
・谷津田では殺虫剤を使用せずに田植えをしようとしている。
・個人で取り組むのではなく、営農組合などグループで進めるとより大きな効果
を期待できる。
〈小野寺さん〉
・昔の農法で稲を作っている。半分イベントだが、田んぼに直接種を播いてから
田植えをしている。この農法だと、虫が来て、鳥が来て、動物が来る。
・農産物を買ってくれる人達を呼んで田植えイベントや観察会をやっている。
子供達に自然とふれあう原体験をさせてあげたい。
・このような活動をしていると同じような考えを持つ人達の情報がよく入ってくる。
市貝町に移り住んで農業をやりたいという声は多く聞く。行政として、そのような
人達を支援する施策はできないだろうか?
〈遠藤さん〉
・サシバの保全のために借りた谷津田で草刈りをした時に、オミナエシやヤマラッキョウ
などの野の花を見て、シンプルに幸せを感じられた。市貝町はとてもすばらしいところだ。
〈柳生さん〉
・経済と環境の共鳴を目指そう!コウノトリを育む農法のお米は普通の1.7倍の
金額で流通している。その農法で酒米を作ってお酒も造っている。
・教育にも力を入れてお金を取れるようにできたらよい。
・インタープリテーションをみんなでやって欲しい。ナショナルトラスト的なことも
考えつつ、「サシバの里」として教育も進めていって欲しい。
〈伊村さん〉
・西の豊岡(コウノトリ)、東の市貝(サシバ)、と言われるようなサシバの里
づくりができたらよい。
そして最後に入野町長が、"サシバの里の政策が統一されていないので、しっかりと
人事も含めて係を作り「サシバの里づくり」を本格的に進めたい"、と宣言されました。
市貝町はそのサシバの世界有数の繁殖地になっているとのことでし
餌は田んぼの周りの草丈の低いところで獲るので、
5×緑の里山ネットワーク馬頭の森と同じ栃木県で、オオタカの保護活動や自然保護に
後の地域振興に関する学習会(ミニシンポジウム)を開催します。
学習会では、猛禽類の専門家も参加しますし、
どもたちから報告があります。
また、3月5日には東京・立教大学で、
ウムも開催します。こちらは、
どちらのイベントも詳しくは下記のチラシをご覧ください。
2月20日 学習会「サシバに学ぶ - サシバはなぜ選んだのか」 (市貝町町民ホール)
3月5日 シンポジウム「サシバの繁殖期の生態と生息状況」(立教大学池袋キャンパス)
5×緑は7月にもこの場所でどんぐりキューブづくりのワークショップを行いましたが、
今回もまた、屋上にブースを出してワークショップを行ってきました。
7月イベントのレポート
https://www.5baimidori.com/satoyama/activity/201007-post-29.html
少し色づいた里山ユニットを展示して、前回からの季節の移り変わりを感じていただければ、と
都市に住む人たちへのメッセージを託しました。
5×緑ではおなじみ、マスコットガールのこはるちゃんもお手伝いに来てくれました!
同じく、参加者として来てくださった富士植木の松本さんと一緒に仲良くキューブづくり。
どんぐりキューブをつくるのはもう何個目?という半ばプロに近いこはるちゃん。
手つきも慣れています。「5×緑とは・・・」のお話だってできるのです。
普段は東京に住んでいるけど、すっかり里山メッセンジャーです。
寒いなか、今回もたくさんの方にご参加いただき、イベントは大盛況でした。
副都心新宿のど真ん中にある1本の苗木はサイズにすればちっぽけなものかも
しれませんが、ここでお話を聞いてくださり、想いを込めてキューブをつくって
くださった皆さんが、この苗木を持ち帰り、季節を感じながら育ててくれたら
いつか新宿が緑で埋め尽くされる日も来るかもしれません。
そんな楽しい想像を、皆さんもしてみませんか・・・?
ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!
そのそばで、若者たちが一心にどんぐりの苗を植えている。
ちょっと不思議な光景。でもワルクナイ。全然ワルクナイ。
新宿のファッションビル・フラッグスとTokyo FMコラボのECO SUMMER FES。
ブースをひとついただいて「どんぐりキューブ」のワークショップを開いた。
ステージではロックやポップスのライブで盛り上がっている。
こんな光景を成立させる、「どんぐり君たち」の健闘を讃えたい。
この前は、東京駅隣接の高層タワーの一室で、丸の内の金融マン&ウーマン相手に
「どんぐりキューブ」づくりをやった。
企業のCSR活動の一環ということだった。
いつもは投資や金融商品のプレゼンテーションが行われているであろう
カンファレンスルームに、コナラやらクヌギやらシラカシやらのベビーたちが
勢揃いしたのも圧巻だったが、スーツ姿のパワーエリートな人たちが、かなりの
真剣モードで苗木を選び、一生懸命植えている姿は、微笑ましくもあり、心和むものだった。
その時も思ったのだ。「どんぐりはエライ」って。
新宿のイベントは、Tokyo FMの人気番組「シナプス」の公開録音も兼ねていて、登場
するアーチストたちが思い思いにエコについて語っている。
タワーレコードはじめフラッグスのお洒落なショップのレジには「どんぐりキューブ」
が置かれ、「どんぐり君たち」はイベント告知にも一役かったのだった。
そんなイベントだけに、ワークショップに参加してくれる人たちもいつになく若い人
が多かった。もちろん夏休みだけにちびっ子たちの姿も。
SHIPSかAMERICAN RAG CIE着用? とおぼしきおっしゃれーな若いコたちと子どもたち
が1つのテーブルを囲んで、どんぐりの苗を植えている姿って、ナンカイイ。
みんな、最初はすごく真剣。
でもどんぐりキューブができるあがるにつれ、だんだん笑顔がひろがっていく。。。
1時間も前からブースのまわりをウロウロしていた小学生。
できた「どんぐりキューブ」を見せあいっこしているカップル。
あっちでは、できたてを写メでパチリ。
こっちでは「どんくりキューブ」と記念撮影をしている。
「できたよーっ!」。お母さんに見せにいってほめられてる子。
苔の下にこっそりどんぐりの種を隠して「どんぐりの雨宿り」って、にっこり笑った
男の子。
つくった「どんぐりキューブ」を大切そうに抱えて「この後、どんな風にお世話をし
たらいいですか?」と問いかけてきた小さな女の子の真剣な眼差し。
わたしたちは、この眼差しを決して忘れないだろう。
うぅん、もっとちゃんと言おう。
この眼差しを忘れない限り、わたしたちはこの仕事を続けていられる、と思う。
「わたしたちは、街に緑を増やす仕事をしています」
イベントの自己紹介でもそう言った。
この生業(なりわい)を一般には「造園業」と呼ぶらしい。
ところが、どうしたわけだかこの「業」につかっていると「誰のための、何のための
緑なのか」ということを忘れそうになる。
でも、みんなに教えてもらった。
「誰のための、何のための緑?」
目の前にあったシンプルな答え。
我らの優秀なメッセンジャーにしてタレントである「どんぐり君たち」は、今度は渋
谷のエキナカのエコ&ファッションのイベント(~8/4)に登場している。
・我らが「どんぐりキューブ」
・「笑顔のアーカイブ」とくとご覧じろ。
・こんな大っきなビルで。
・こんな風に。
・みんな一生懸命
・だって新宿ってこうだもの
文章: 宮田 生美
この記事のタイトル「森の未来に出会う旅」は、私(5×緑スタッフ・宮垣)が、
地元・高知県で出会った高知大学の大学院生、井上将太くんが企画・実施している
「建築士のための木造建築セミナー」のタイトルです。
森の未来に出会う旅 - 森から学ぶ木造建築の建築士セミナー in 嶺北
http://www.mori-mirai.com/index.html
高知県は森林面積率が84%で全国1位なのですが、他地域と同じように
林業従事者の減少や、国産木材需要の低迷により、山の荒廃は進んでいます。
高知県内でも、嶺北地域と呼ばれるエリア(土佐町、大豊町、本山町、大川村、旧本川村)は
特に森林率が高く、県内でも有数の歴史ある林業区域ですが、地域人口の減少と高齢化は
歯止めがきかず、日本の山村地域が抱える共通の問題が浮き彫りになっています。
実家は大工さんという将太くんは、大学1年のときに高知の出版社「南の風社」が主宰する
「いなかインターンシップ」というプログラムに参加し、嶺北地域の木材会社で
インターンをしたことがきっかけで、日本の林業が抱える問題を目の当たりにしたそうです。
その後、林業が支えてきたこの地域をまるごと盛り上げたい!という強い想いから
上記のようなセミナーを企画し、この5月からは地域に移り住んで、住民の方々と共に
未来を切り開こうとしています。
ゴールデンウィークの最終日、そんな将太くんを訪ねて嶺北を訪れたところ
木を切り出している森から、原木市場、製材所、木造建築のモデルハウスまで
木材流通の一連の流れをミニツアーで見学させてもらえることになりました。
そのミニツアーのことを、何回かにわけてレポートしたいと思います。
まず最初に訪れたのは、人工林の集団間伐の目的のために設定された「団地」です。
土佐町の毛知田というところにあります。 団地化とは、所有者の異なる小さな山林を
効率良く間伐するために一つの施業区域としてまとめることをいいます。
雨がしとしと降るなか、将太くんについて森の奥深くまで歩いて行きました。
まず最初に立ち止まったこの場所で、将太くんから出題。
「この森は、良い森ですか?悪い森ですか?」
5×緑に興味を持ってくださる皆様ならすぐにわかるかもしれません。
私は人工林の間隔よりも、地面に何も下草が生えていないことが気になり
「悪い森!」と答えましたが、正解でした。
団地の看板にも書いてありましたが、理想的な人工林は、適度に間伐されて
陽が射し込み、足元には豊かな植生(下草、広葉樹)が生茂る森です。
このように間伐されていない森は、陽も射し込まないので非常に暗く
足元には枯れた杉の枝葉だけが重なっています。 立ち枯れしてしまっている
杉もたくさんあります。 下層植生もなく、生き物のいない土壌は大切な雨水を
貯め込むことができず、水源機能は低下し、土砂を流して災害発生率を高めます。
まさに死の森と化しています。
しかしこれでも遠くからみれば、今は杉の葉の緑に覆われているため
「緑の森」に見えるのです。 外から見れば緑だけれど、その中は乾いた森。
まさに、「緑の砂漠」なのです。
すぐその隣には、何年か前に間伐された人工林がありました。
これが本当の「良い森」、豊かな森ですね。
写真が明るいのは、カメラの撮影方法を変えたからではありません。
それだけ陽が射し込み、緑が広がっているのです。
土壌はふかふかで、鳥や虫がたくさんいます。
そして、緑の砂漠との間には、まっすぐな境界線がありました。
5×緑での仕事を通して、間伐や森林管理の必要性は理解しているつもりでしたが
この境界線を目にしたときは、胸がずきんと痛みました。
この境界線をひくのは、人間の手なのです。
戦後の住宅建設ラッシュ時に大量に植林された木は、今まさに成熟期を迎え
間伐・伐採を必要としています。 昔小学校の授業で、アマゾンの森林伐採について
学び、「木は切ってはいけない」と思いこんでいる人はまだたくさんいます。
でも、今の日本では「木は切らなくてはいけない」のです。
嶺北ミニツアーのレポート、第1回はここまでにします。
次回は、木を切るために必要なことを確かめるために、山を降り、
原木が木材として使われていく過程をレポートしたいと思います。
取材・執筆:宮垣 翠 (5×緑スタッフ)
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