恵比寿日和
京都のこと 町家のこと 2 風情
2011年11月29日
古今和歌集に
風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
という有名な歌がある。
そういえば、俳句にも
秋来ぬと合点させたる嚔(くさめ)かな
という蕪村の句があった。
つくづく、季節の移ろいは気配で感じるものであったか、と思う。
町家には、表から裏へと通じる土間があって、これを「通り庭」と呼ぶ。
「通り庭」は人が行き来するとともに、自然が往来するところでもあった。
風が通り、光が抜ける。
今で言う庭は「奥庭」や「坪庭」と呼ばれ、時に「壺中の天」とも称された。
棕櫚竹がサワサワと鳴り、葛布の暖簾がかすかに揺れる。
そこに住む人の暮らしぶりが家に染みこんで景色をつくる。
要素や機能に還元できない行間ににじみ出るもの。
日本人はいつも、風情の中に美しさをみつけてきた。
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