恵比寿日和

私の好きな本 その2 「あなたのために」

バトンを引き継ぎ、第2回は、辰巳芳子さんの「あなたのために」(文化出版社)です。


この本の副題は「いのちを支えるスープ」。
そう、これは料理(スープ)の本です。

書店で表紙にひとめぼれ+辰巳さんの本+使えるかも!と即入手しました。
(読んでから「使えるかも!」は軽率だったと反省・・)

この本は嚥下困難に苦しまれたお父様のために作り続けたスープがベースになっているとのこと。
和・洋とスープが系統立てて整理され、スープを作る場合の心得に始まり、素材の選び方や切り方、取り扱い方、水のこと、火力のことなど調理上の注意から道具に至るまで、美しい写真とともに優しく、そして力強く紹介されています。食に対する哲学や1品1品に対する「想い」が感じられ、読んでいると背筋がピン!と伸びてくるような内容です。

スープを口にする方への心遣いはもちろん、食は生命の源、心のありようを学ぶような1冊です。


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「使えるかも!」と思ったのにはわけがありました。
そのころ、食物アレルギーのため、食べられないものが多い娘の食事作りで四苦八苦していて、
常に頭の中は保育園に持参するお弁当&おやつのこと。
本の中にあるスープの材料を見ると、娘が食べられるシンプルな素材が多く、作れる!と思ってしまったのです。実際には、吟味された素材を同じように用意することは難しく、まったく同じようには到底できないのですが、それでも手をかけて作ったスープは身体にすっと入ってくる優しいお味でした。

三度の食事+おやつ作りで1日中キッチンにいるかも?ということも多く、
何で食事を作るのにこんなに時間がかかってしまうのだろうとよく思っていました。
(もちろん手際の悪さもあるのですが)
「早い=いいこと=優秀」というような無意識の中の思い込みのようなものにしばられていたような気がします。この本に出会って、一つ一つ手作業していけばそれなりに時間がかかるもので、その間に色々な想いが重なったり、想いが込められていくには時間も必要では―と思うようになりました。
そして大変だけど、食べてくれる相手がいることは幸せなことなのではないかと。

今は、お金を出せばそれなりに美味しいものが手に入るし、「簡単・便利!」「混ぜるだけ」など、簡略・スピードが売り文句の商品もたくさんあって (その1のM田さんの中でも触れていますね)
忙しいときは、とても役立つし、助けられることもしばしばですが、これらが全く使えなくなって始めて、いかにこれまでの暮らしの中にあふれていたのかと気づきました。
あまりにこういったもの囲まれてしまうと"そもそも"が何であったか遠くなってしまう気がします。
知らなくても生きていくのに支障はないのかもしれません。
それでも娘には少しずつできることから伝えていきたいなぁと思っています。

と話がそれましたが、私にとってこの本は、楽な方に流されそうになってしまう時、料理をするということ、想いのこもった料理の力を改めて確認するためのもどるべき場所のひとつになっています。

 

ブログ印_ASA.jpgのサムネール画像

 

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娘いわく「虹色の本」 

 

 

 


 

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