7年前に施工をした小さな集合住宅。
環境に配慮したいというオーナーの方の意向で1階のお庭だけでなく、熱環境を考えた屋上緑化、壁にはフジを使って緑化をし、雨水を貯めて潅水に使えるシステムを導入させていただいた。
2階の庇上にも5×緑の里山ユニットを並べている。
今では公共施設にも採用いただいている、庇上の事前養生緑化ユニット(あらかじめ植栽し育成期間を取った緑化ユニット)だが、思えばその端緒となったのがこのプロジェクトであったかもしれない。
7年の時間をかけて、緑はすくすくと成長し、今では建物を包みこむようだ。
建物の両脇に植えたシロバナヤマフジも、壁に取り付けたフジ棚をつたって、今はひとつにつながっている。
ゴールデンウィークの一日。久しぶりに施設を訪ねてみた。
薫風の中、シロバナヤマフジが見事な花を咲かせていた。
通りかかった男の子が、お父さんに「ねぇ、見て。葉っばでお家がいっぱいだね」と声をかけると、お父さんは「あぁ、本当だ。すごいね」と足を止めた。
緑はそこに住む人のためだけではなく、いつも街に開かれている。
道行く人の心に留まる、ささやかだけれど確かな幸せ。そんな小さな喜びをつくり出すことが、私たちに与えられた役目なのだとあらためて思った。