5×緑ニュース
「生物多様性の庭」に思う 1
2010年12月16日
日本の昔ながらの植物で都市緑化を考えていると、都市は都市なりの生態系が息づいていることに思い当たります。
5×緑のサイトの「プレス」でもご紹介していますが、12月3日付けの朝日新聞に「都会の庭 命を育む」という記事が掲載されました。
https://www.5baimidori.com/press/56.pdf
NPOの調査で東京の民家でメジロなど30種の生きものが確認できたとか。
記事では「庭に自生種を植えたり、野鳥が訪れやすい造りにしたりと、住宅建築でも生きものへの配慮が広がっています」とレポートしています。
この秋、生物多様性の国際会議が名古屋で開かれたこともあって、ようやく生態系に配慮した庭づくりへの関心が高まってきているようです。
こうした動きをとても喜ばしいと思う反面、危惧も覚えます。
私たちも「在来種で都市を緑に」と、最初は意気揚々と、ある意味では能天気に考えていました。
しかし、その日本在来の植物が本当にない! のです。
「これはいかん」と2007年から、里山ネットワークをつくることになりました。栃木の馬頭の森で実験的な植生の回復の取り組みを山の人たちと始めました。
林床の管理などによって再生された植物を、一定のルールを決めて、都市緑化に提供してもらおう、という試みです。
しかし、里山に行けば行くほど、それがどんなに大変か思い知ることになります。
馬頭のフィールドは、よく管理された素晴らしい里山ですし、訪れるといつも癒されます。
実際、慶應大学との共同研究では帰化率も低く、わずかながら希少種も確認されています。
目の前には、豊かな自然が広がっているように見えるのです。それでも! その林床から外来種のまったく混じらない植生のかたまりをさがすのは極めて困難であることがわかりました。
その上、人が管理に入ることによって、どうやら外来種の種を侵入させてしまうようです。
管理しなければ、豊かな林床の植生は維持できませんから、人が入らざるをえないのですが、昔、普通に山の管理と里山の暮らしがひとつらなりに成り立っていた頃は考えられないことが起きています。
そこで、冒頭の危惧ですが、都会で山の草木への関心が高まるのは嬉しいものの、「ほしい」→「あそこにある」→「採ってしまえ」的、図式で山から植物が採取されたら、今、ほそぼそと命脈を保っている在来種の自生地もあっという間に姿を消してしまうでしょう、と思うのです。
なぜなら、私たちはよくわかっていますが、今まであまりかえりみられなかった日本の地味な在来種は、商品として流通していないからです。ほとんど。
もし商品価値があるということになって、上の図式が繰り返されることになれば。。。そして人は常にこの図式をくりかえしてきたと思うのですが。。。だからとても心配です。
親木が特定できるような形で、地域性にきちんと配慮した生産者がまず育たなければ、「生物多様性の庭」は、俯瞰してみると「生物多様性を壊す庭」になりかねません。
じつは、今月はじめ、アゼターフ(里山の植物の植生マット)の採取地を見に、あるハウスメーカーの方と馬頭を訪れました。
そして、その帰りにオオタカ保護基金代表の遠藤さんとお目にかかりました。
次回はそのことをレポートしようと思います。
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