5×緑ニュース

「生物多様性の庭」に思う 3

「生物多様性の庭に思う 1」では、生き物や地域性に配慮した庭づくりが注目されはじめて喜ばしい反面、それを実現するためには、地域性種苗をしっかり育てる生産者の育成が不可欠であることをレポートしました。

「生物多様性の庭に思う 2」では、生産者が育成されるだけでは、肝心の里山の在来種、郷土種の自生地の保全はできないこと、
5×緑では実験規模ながら里山の管理を行っているが、在来種の自生地を守ることがとても難しいこと、
在来種で庭づくり(都市緑化)を健全に進めるためには、供給者側だけでなく、発注者の側の意識も変わる必要があること、
を実体験を元に書かせていただきました。

前回お約束した通り、今回はオオタカ保護基金の遠藤さんのお話をご紹介したいと思います。

特定非営利活動法人オオタカ保護基金は、オオタカやサシバの生息地として有名な栃木県那須野ヶ原を拠点にワシタカ類の保護、研究、普及活動を行っています。

5×緑の里山ネットワーク、栃木の「馬頭の森」の佐藤さんが、昨年「生物多様性会議とちぎ」にバネリスとして参加したことから、オオタカ保護基金とのつながりができました。
https://www.5baimidori.com/satoyama/activity/201010-post-32.html

代表の遠藤孝一さんは、学生の頃からオオタカの保護を通じた自然環境の保護活動に取り組まれていて、現場を見続けてきた、その言葉には重みがあります。

その遠藤さんに、「オオタカが生息できる環境を守るためには、林業や農業が元気になることが大切です。けれども、山や田んぼの担い手はみんな高齢化していて、あと10年。このまま10年がすぎたら林業も農業も崩壊してしまうんじゃないかと思っています」と言われたときには、胸を衝かれる思いがしました。

オオタカが棲めない環境になってしまうことと、在来種の絶滅は重なり合っています。

そして「あと10年」という時間的なリミットは、私たちも心のどこかで痛切に感じていることでもありました。

このまま10年が過ぎたら、山の生業の多くが消失する、そんな流れが、取り返しのつかない動きとして定着してしまうのかもしれない。いえ、この不可逆的な流れは、既に始まってしまっているのかもしれません。

そんな中、5×緑が馬頭の佐藤さんたちと取り組んでいる、「里山の林床管理と都市緑化をリンクさせた取り組み」を遠藤さんたちがオオタカやサシバを守るために活動しているフィールドでも展開できないか、という呼びかけをいただいたのです。

話し合いや準備を進め、もう少し暖かくなって林床の草木が芽吹いたら、遠藤さんたちのフィールドを訪問することになっています。

こんな小さな動きが、里山を取り巻く危機的な流れにどれほど棹さすことになるのか、そんな思いもよぎりますが、私たちができることからはじめなければ、何にもはじまらないのも確かです。

最近知人に紹介された「働き方研究家」の西村佳哲さんの著作の一節を最後に引用させていただきたいと思います。

 この世界は一人一人の小さな「仕事」の累積なのだから、世界が変わる方法はどこか余所 にではなく、じつは一人一人の手元にある。

5×緑 宮田生美






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