2011年9月の記事
緑のカーテン
2011-09-29 (Thu)
私の好きな本 その4 「日本の色辞典」
2011-09-26 (Mon)
第4回のご紹介は「日本の色辞典」(吉岡幸雄 紫紅社)です。
日本の伝統色のうち209色を中心に、379色の色名解説と植物染料で絹布を染めた色見本や
関連する植物・風景・織物などの写真が掲載されています。
(色見本については、一部岩絵の具を和紙に塗ったものもあります。)
桜色、萌黄色、山吹色といった馴染のあるものから麴塵(きくじん)、空五倍子色(うつぶしいろ)
といった色名も色合いも本で初めて知るようなものまでたくさんの色が見られ、
もともと「色」、特に日本の伝統色が好きな私には持っているだけで楽しい、という本なのですが、
この本の素晴らしいところは何と言っても、日本の伝統色を再現した布の美しさ。
淡い色から濃い色まで、植物だけでこんなにも深く澄んだ色が、と驚かされ、
眺めていると色から力をいただけるようです。
色名も興味深いものです。
「自然の一瞬の姿、花のひとひらや風に揺れる枝葉の裏表に、木の実の色と形に、
人々は魅せられて、それらにゆかしい名をつけるようになっていった。」と前書きにありますが、
曙色、若菜色、朽葉色、団栗色といった色名を見ていると、万葉の昔から王朝の貴人、
武家、江戸の庶民と受け継がれてきた日本人の自然への想いに触れ、
つながるような気がします。
「卯の花色」というのもありますが、卯の花はウツギのことだそうで、
里山ユニットでお目にかかったっけ、と5×緑にご縁をいただいてから
新たに親しみを覚える色も増えてきました。
著者は江戸時代から続く京都の染屋の五代目当主で、
染師の方と共に植物染による日本の伝統色の再現に取り組んでおられるのですが、
長く美術工芸の出版に携わっていたこともあり、染めの体験談から歴史・文学まで
解説も充実しています。
「紅絹色(もみいろ)」の項では、昔の女性は肌に近い裏地などに紅絹(もみ)を
使っていたけれど、染料の紅花には血液の循環を良くする薬効も、とあり、
単に女性らしい色合いというだけでなく、冷えを防ぐために
着るものにも植物の力を上手に取り入れていた知恵に感心させられました。
眺めても読んでも楽しい、日本の色と植物に興味がある方におすすめの一冊です。
わたしの好きな本 その3 「のばらの村のものがたり」
2011-09-12 (Mon)
今回ご紹介させていただく本は、ジル・バークレム作「のばらの村のものがたり」
という絵本シリーズで、春・夏・秋・冬に分かれて野ネズミの話しが描かれています。
私の原点とも言える本です。
この絵本の素晴らしいところは、ねずみが木の中に生活しているというユニークな
設定と、葉っぱ一枚、お皿一枚まで緻密に描かれた可愛らしいイラストです。
小さい頃は何度も読んでは、こんな木の中に住んでみたい!とか木の家で生活したい、とよく想像しながら絵を描いたりしていました。
野原や小川、絵本に出てくる舞台が大好きで、中学2年の夏、親にこんな所に行ってみたいとせがみ、イギリスのコッツウォルズ地方という美しい田園風景が残っている場所を訪れました。
周囲は青々とした牧草地に囲まれ、何百年も前から残っている古い家並み。一軒、一軒家の脇には花壇があり、様々な草花が植えられていました。蔓やバラが家の壁をつたい、家と緑がとけこんだ美しい風景を見て感動しました。緑と人との距離が近く、のばらの村の絵本の世界とつながったような気がしました。
その頃から少しずつ緑化や景観保全に興味を持ち始め、将来そのような仕事に携わりたいと思うようになりました。
小さい頃にこの絵本に出会い、のばらの村の世界に引き込まれたお陰で「緑」が好きになり、夢を思い描くようになったように思います。
都市環境では、大きい木が残っている場や、様々な生き物が生きているのだと体験する機会が少ないので、こういった絵本が「緑」を好きになるきっかけになるのかなと思っています。
周りで赤ちゃんが生まれたと言ったおめでたい話しをよく聞くようになりました。
お母さん達に、お勧めしたい!と思いこの絵本を選びました。
私の好きな本 その2 「あなたのために」
2011-09-04 (Sun)
バトンを引き継ぎ、第2回は、辰巳芳子さんの「あなたのために」(文化出版社)です。
この本の副題は「いのちを支えるスープ」。
そう、これは料理(スープ)の本です。
書店で表紙にひとめぼれ+辰巳さんの本+使えるかも!と即入手しました。
(読んでから「使えるかも!」は軽率だったと反省・・)
この本は嚥下困難に苦しまれたお父様のために作り続けたスープがベースになっているとのこと。
和・洋とスープが系統立てて整理され、スープを作る場合の心得に始まり、素材の選び方や切り方、取り扱い方、水のこと、火力のことなど調理上の注意から道具に至るまで、美しい写真とともに優しく、そして力強く紹介されています。食に対する哲学や1品1品に対する「想い」が感じられ、読んでいると背筋がピン!と伸びてくるような内容です。
スープを口にする方への心遣いはもちろん、食は生命の源、心のありようを学ぶような1冊です。
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「使えるかも!」と思ったのにはわけがありました。
そのころ、食物アレルギーのため、食べられないものが多い娘の食事作りで四苦八苦していて、
常に頭の中は保育園に持参するお弁当&おやつのこと。
本の中にあるスープの材料を見ると、娘が食べられるシンプルな素材が多く、作れる!と思ってしまったのです。実際には、吟味された素材を同じように用意することは難しく、まったく同じようには到底できないのですが、それでも手をかけて作ったスープは身体にすっと入ってくる優しいお味でした。
三度の食事+おやつ作りで1日中キッチンにいるかも?ということも多く、
何で食事を作るのにこんなに時間がかかってしまうのだろうとよく思っていました。
(もちろん手際の悪さもあるのですが)
「早い=いいこと=優秀」というような無意識の中の思い込みのようなものにしばられていたような気がします。この本に出会って、一つ一つ手作業していけばそれなりに時間がかかるもので、その間に色々な想いが重なったり、想いが込められていくには時間も必要では―と思うようになりました。
そして大変だけど、食べてくれる相手がいることは幸せなことなのではないかと。
今は、お金を出せばそれなりに美味しいものが手に入るし、「簡単・便利!」「混ぜるだけ」など、簡略・スピードが売り文句の商品もたくさんあって (その1のM田さんの中でも触れていますね)
忙しいときは、とても役立つし、助けられることもしばしばですが、これらが全く使えなくなって始めて、いかにこれまでの暮らしの中にあふれていたのかと気づきました。
あまりにこういったもの囲まれてしまうと"そもそも"が何であったか遠くなってしまう気がします。
知らなくても生きていくのに支障はないのかもしれません。
それでも娘には少しずつできることから伝えていきたいなぁと思っています。
と話がそれましたが、私にとってこの本は、楽な方に流されそうになってしまう時、料理をするということ、想いのこもった料理の力を改めて確認するためのもどるべき場所のひとつになっています。
娘いわく「虹色の本」